問いを変えると、何が変わる? QTから考える思考の切り替え
私たちは、何かを考えるとき、頭の中で自分に問いかけています。
「なぜ、うまくいかないのだろう」
「どちらを選べば間違えないだろう」
「どうして、あの人は分かってくれないのだろう」
問いは、答えを探すための入口です。同時に、どこに注意を向けるのか、何を手放すのかを決める枠でもあります。
同じ状況でも、問いが変われば、集まる情報が変わります。見える選択肢が変わります。そして、次に取れる行動も変わります。
良い答えを急ぐ前に、いま自分がどんな問いの中で考えているかに気づく。それが、思考を切り替える最初の一歩です。
問いは、思考の向きを決めている
たとえば、新しい企画が思うように進んでいないとします。
「誰のせいで遅れているのか」と問えば、問題の原因になった人や失敗を探し始めます。
「次に進むために、いま確かめるべきことは何か」と問えば、未確認の前提や、これから取れる行動に注意が向きます。
前者がいつも悪く、後者がいつも正しいわけではありません。責任の所在を明らかにする必要がある場面もあります。ただ、どの問いを選ぶかによって、見える範囲が変わることは確かです。
問いを変えるとは、都合よく前向きに言い換えることではありません。 現実から目をそらすことでもありません。
いまの問いが、自分の目的に役立っているかを確かめることです。
思考を閉じる問い、可能性をひらく問い
思考が行き詰まっているとき、問いにはいくつかの特徴があります。
- 答えが「自分はダメだ」「相手が悪い」のどちらかに固定されている
- 過去の原因だけを探し続けている
- 正解か失敗かの二択になっている
- 自分では変えられないことだけに注意が向いている
こうした問いに気づいたら、次のように少しずらしてみます。
- 「誰が悪いか」から「何が起きていて、何なら変えられるか」へ
- 「なぜできないか」から「できる条件は何か」へ
- 「正解はどれか」から「何を大切にして選ぶか」へ
- 「失敗しないには」から「小さく試すには」へ
言葉を変えるだけで、すぐに問題が解決するわけではありません。それでも、問いが一つ増えると、これまで見えていなかった選択肢が一つ増えることがあります。
QT(質問思考)が示す「批判者」と「学習者」
QT(質問思考)は、心理学者でエグゼクティブコーチでもあるマリリー・G・アダムスが体系化した考え方です。
QTでは、私たちが状況に向き合うときのあり方を、ジャッジャー(批判者)とラーナー(学習者)という二つのマインドセットで捉えます。
批判者は、批判・非難・決めつけに傾き、視野が狭くなっている状態です。学習者は、好奇心を持ち、事実や選択肢を探ろうとする状態です。
ここで大切なのは、批判者を悪者にしないことです。人は誰でも批判者になります。自分を守ろうとするとき、急いで結論を出したいとき、余裕がないときには、自然に決めつけが強くなります。
QTの価値は、「批判者になってはいけない」と責めることではありません。いま自分がどちらに傾いているかに気づき、必要なら学習者へ戻る選択肢を持つことにあります。
マリリー・G・アダムスの「選択の地図」は、この切り替えを視覚化したものです。
スイッチング・クエスチョンは、答えを押しつけない
自分が批判者にいると気づいたとき、状態を切り替えるために使う問いが、スイッチング・クエスチョンです。
たとえば、次のような問いです。
- 私はいま、何を事実だと思い込んでいるだろう
- 他にどんな見方ができるだろう
- 相手は何を大切にしているのだろう
- 私が本当に望んでいることは何だろう
- ここから学べることは何だろう
大切なのは、正しい質問集を覚えることではありません。自分を責めたり、相手を裁いたりする流れからいったん離れ、好奇心を取り戻せる問いを選ぶことです。
問いは、相手を誘導するためにも使えてしまいます。あらかじめ決めた答えへ連れていく質問は、形だけが問いでも、選択の余地を広げません。
良い問いは、答えを押しつけるのではなく、考える余白を返します。
日常で問いを立て直す3つのステップ
1. いま頭の中にある問いを書く
考えをきれいにまとめる必要はありません。「なぜ自分だけ」「どうせ無理では」も、そのまま書きます。
書くことで、問いと自分の間に少し距離ができます。
2. その問いが何を見せ、何を見えなくしているか確かめる
書き出した問いを眺めてみてください。あなたはどんな情報ばかりを集めているでしょうか?
反対に、どんな可能性を最初から除外しているでしょうか。
何か、傾向は見えてきますか?
ここでは問いを批判せず、ありのままを観察します。
3. 目的に役立つ別の問いを一つ作る
「いま何を解決したいのか」に戻り、その目的に近づく問いを一つだけ作ります。
たくさんの立派な問いを並べる必要はありません。次の行動や対話につながる問いが一つあれば十分です。
問いを変えても、現実の責任は消えない
問いを変えることは万能ではありません。
必要な情報を集めること、約束した責任を果たすこと、専門家の判断を求めることが必要な場面もあります。心身の不調があるときに、問い方だけで解決しようとするのも適切ではありません。
問い直すことは、現実を軽くする魔法ではなく、現実との向き合い方を選び直す手段です。
答えが見つからないとき、さらに強く考える前に、いまの問いを眺めてみてください。
この問いは、私が見たいものを見せてくれているだろうか。
その問いから、次の視点が始まるかもしれません。
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参考文献

